ひだまりの中で

日々のできごと。

テープ起こし

「アルナの子どもたち」
Tribeca映画祭最優秀ドキュメンタリー賞
Hot Docsカナダ国際ドキュメンタリー映画祭第一席
チェコ共和国人権ドキュメンタリー国際映画祭最優秀作品賞 イスラエル作品。84分。

 この作品は、ジェニンの難民キャンプでパレスチナの子どもたちの支援事業を続けたユダヤ人女性アルナ・メールと子どもたちの交流の記録であり、同時にアルナの死後、和平の頓挫に影響された子どもたちの軌跡がテーマである。アルナの息子であるハミース監督は、2002年のイスラエル軍のジェニン侵攻後、一緒に活動していた子どもたちのその後の人生を知りたくてジェニンを訪れ、青年になった彼らが夢を実現することなく死んでいったことを知る。
 フィルムには占領に反対し、パレスチナの自由を願うイスラエル人の存在、ユダヤ人の仲間を信頼し、一緒に活動するパレスチナの人々、夢を持って生きようとする子どもたちの姿が映し出されている。同時に圧倒的な軍事力の前にその試みが費えた現実。また軍事侵攻の中で、ある人は宗教的に、またある人は虚無的になっていく姿も見せてくれる。そもそも意図して準備されたものではなく、青年たちの後半生と向かい合うなかで作られた作品だけに、何よりも現実の重みがある。
 アイデンティティの確率に長年苦しんだという監督自身の内面や、支援活動を継続できなかったという苦い思いがパレスチナの青年たちへと共感して息づいている。平和や自由を求めながらも死んでいかざるを得なかった人々の姿は、私たちに突きつけられた現実でもある。

ジュリアノ・メール・ハミース監督
 イスラエルの俳優、監督。ユダヤ人の母とパレスチナ人の父の間に生まれる。「もうひとつのノーベル平和賞」を受賞した母アルナ・メールがジェニン難民キャンプで始めた子どもの演劇活動にかかわる。2002年イスラエル軍のジェニンへの侵攻後、劇団に参加していた子どもたちを訪ねてつくったのが「アルナの子どもたち」。現在、ジェニンでの子ども劇団再開のために活動。1957年生まれ。

パレスチナ子どものキャンペーン
 1986年に日本の市民によって活動を開始したNGO(1999年にNPO法人となる)。パレスチナガザ地区でのろう学校開校と支援、子どものセンター、プレイルーム作り、ジェニンでの幼児とお母さんのための心のケア、リクリエーション活動、レバノンの難民キャンプでの子ども歯科、幼稚園、落ちこぼれの子どもの補助クラスなど、地元のNGOと一緒にプログラムを実施しています。また、イスラエル平和団体と長年交流を続けています。
 日本国内では国際理解教育、パレスチナの子どもの絵画や写真、作文の紹介、文化紹介などに取り組んでいます。1996年東京弁護士会人権賞受賞。
 生前のアルナ・メールと交流があり、2002年にジェニンでの活動を開始したことをきっかけにハミース監督ともめぐりあい、この作品を日本に紹介することになりました。