右の写真、手の甲に書かれた電話番号に注目。
お母さんが、大事な電話番号をなくさんように、手の甲に書いたんでしょうね。
ビニール袋1つとパスポートだけで、誰も知る人もおれへんのに、ひとりで国境を渡ったこの子。
どんだけ心細かったやろうと思うと、不憫で涙が止まらない。
お母さんは、スロバキアの心優しいボランティアの人らが、息子のことを守ってくれた様子を見て、さぞかし安心したやろね。どんだけ有難いと思わはったことやろ、と思っていたら…。
お母さんがスロバキアの人にお礼のメッセージを。
「私はウクライナ国民で、未亡人です。息子以外にも子供がいます。スロバキア国境のボランティアの皆様に心からお礼を申し上げます。息子が国境を越えるのを助けていただき、手厚いお世話をしていただいてありがとうございます。息子は11歳で、ひとりで列車に乗り国境に向かいました。国境で警備隊の方が、息子の手を引いて国境を越える助けをしてくださいました。スロバキアのボランティアの方々は息子に食べ物を与えてくれ、首都まで連れて行ってくださいました。息子の命を救っていただいて感謝の気持ちでいっぱいです。私たちが住む側には原発があり、ロシア軍の攻撃を受けています。私には足の不自由な母がいるので、母をひとり置いて息子と一緒に行くことはできません。息子をひとりでスロバキア行きの列車に乗せたのはそのためです。息子は大きな心の方と出逢えて、小さな国なのに心の大きい人がスロバキアには多い。どうかウクライナの子供たちを救って、シェルターを見つけてやってください」
もう涙が止まれへん。
息子をひとりで行かせる決意をするまでのお母さんとおばあちゃんの問答が聞こえるよう。
おばあちゃんなら娘と孫のことを思って「私のことは心配せんでエエから、この子を連れてスロバキアに逃げ」と言うたよね、きっと。
けど誰が足の不自由な母親を置いて逃げられる?
未亡人の彼女は、集められるだけの勇気をかき集めて、息子をひとりで逃げさせる英断をしたんよね。
息子が家を出た日、おばあちゃんはどんな思いで孫を見送ったんやろう。
お母さんはどんな思いで11歳の息子をひとりで列車に乗せ、走り出す列車を見つめたんやろう。
駅のホームで列車が小さくなって見えなくなるまで見守りながら、きっと泣き崩れはったんやろな。
手の甲に書かれた電話番号が切ない。
おそらく自宅の番号で、11歳ならそれくらい覚えていただろうけど、お母さんはそれでも万が一忘れたら、と取り止めのない不安に襲われたんとちゃうやろか。
二度と会えないことのないように、思わず息子の手の甲に書かずにはいられへんかったんやろうな。
どうかこの子がお母さんとおばあちゃんの元に帰られる日が、1日も早く来ますように。
避難してるのは基本的に女性と子供。離れ離れになった家族が、1日も早くまた一緒に暮らせますように。