パレスチナ子どものキャンペーン事務所から、放送大学の高橋先生の講演会テープが届く。
テーマは「激動の中東情勢とアメリカ大統領選挙」
「夢:きわめて個人的な記述」と題する一枚のメモがテープと一緒に同封されていたので全文を紹介する。
5月はじめの朝、妻は昨晩見た夢のことを話し出した。「義父さんちのガスボンベが終わっちゃったからって、義母さんがうちのガスを使って料理しているのよ」。「なんてこった!」と私は答えた。
まさしくこれは悪夢だ。私たちはもはや生存にかかわることしか考えられない。食べ物を確保し、安全な水を得ることがすべてだ。妹たちの夢は家でお菓子を作ることだけだ。電気も燃料もガスもないから、菓子屋やパン屋は店を閉じているか、棚が空っぽかなのだ。
同じ日、母は嫁に行った妹からの電話を受けた。妹は4キロしか離れていないところに住んでいるが、ガソリンがなくて車が動かないから実家に来ることもできない。妹は生後三ヶ月の赤ん坊のことをとても心配している。というのも、国連も政府の病院も乳児へのワクチンをまだ受けていないのだ。(停電で冷蔵庫に備蓄されていた生ワクチンがダメになったといわれる)。こうしたニュースに怯えながら、私たちにはどうすることも出来ない。同じ状況にあるうちの赤ん坊を毎日見ながら、私の無力感も募るばかりだ。
私たちが切実に願っているのは、自由になりたいとか、あちこち旅行したいとか、ガザを出てヨルダン川西岸やエルサレムに行きたいとか、家を建て増ししたいとか、繁華街に行きたいとか、博士号を取りたいとか、良い仕事に就きたいとか、お金をもっと稼ぎたいとか、腐敗と戦いたいとか、よい政府を持ちたいとか、民主国家になりたいとか、国を持ちたい・・・・とかいうことではないのだ。この2008年5月、ガザの住民は今日食事が出来ることを願い、将来の開発ではなく、明日も生活が続くことを願っている。
ハマスの政権奪取から10ヶ月経ったいま、私たちはこういう状況におかれている。そのハマスは人々に犠牲を強いながら、イスラエルから入る燃料を抑えて、世界にガザの危機を見せようとしている。そこには3つのシナリオが考えられるかもしれない。
ハマスは他のアラブのゆがんだ政権と同じく、人々に生活の心配をさせ、選挙や政治のことを考えさせないようにしているのだろうか。あるいは、選択の余地がない人々がイスラエルやエジプトとの国境を越えようとして死ぬのを「飢えた人々の革命」というドラマにすり替えようとしているのか。はたまた、イスラエルとの間での解決に向けて、人々が選択できる政治的な幅を最小にしているのかもしれない。
「ガザとジェリコを最初に返還する」というシナリオを人々に受け入れさせるためにアラファトでさえ時間をかけたが、ハマスは、どんなことでも受け入れるようにと人々を急かせているのだろうか。
*著者のイブラヒムさんはガザに住んでいる30歳の男性。(翻訳:パレスチナ子どものキャンペーン)